初々15
1986年3月。田舎の小さな町にカナは生まれた。働き者の父にそれを支える母。多少お節介な部分が玉に瑕だが美人で素敵な母だったそうだ。当時をよく知る祖母の話では、それはもう仲睦まじいおしどり夫婦だったという。決して裕福ではないが暮らしに困る訳でもなく、平凡ではあるが幸せな家庭環境だった。その中で彼女はすくすくと育っていった。そしてそんな幸せがずっと続くと信じていた。しかし彼女が14歳になる頃、転機が訪れた。父が会社はクビになったのだ。理由はよく分からない。セクハラ、不倫・・・きっと言えない理由があったのだろう。お前にはまだ早いと言って、会社をクビになったという事実しか教えてもらえなかった。父は退職後、暫くの間は就職活動をしていたようだが、なかなか仕事が見つからず時が経つにつれ荒れていった。酒びたりの父。次第に増えて行く夫婦喧嘩。彼女の居場所は、もはや家庭には無かった。それでも彼女が元気で居られたのは幼なじみの裕也がいてくれたからだ。いつもの公園。隣には裕也が居た。彼女の希望で、年甲斐も無く二人は砂場で遊んでいた。「昔は二人でこうやってお城作ったりしたよね」「そうだな。お前はいっつもお城のお姫様で俺がナイトで…」
1704回
2010/04/11