初々59
時は西暦2008年。世界は不況の渦に襲われた。米国に端を発したこの不況。元々日本への影響は軽微だと思われており、危機感を持っている者は少数だけだった。だが時間の経過と共に日本の景気も悪化し、気づけば世界で一番影響を受けた国と言っても過言では無い程の状況へと陥り、体力の無い中小企業はバタバタと倒れていった。そして、彼女の父もその一人だった。彼女の父は、元々小さな不動産会社の社長だった。小規模ながらもそれなりに利益も出しており、彼女は小さい頃から比較的裕福な家庭で元気に育った。だがそれも今では夢の様だ。景気の悪化と共に、父の会社の経営は悪化し赤字へと転落していった。父はなんとか会社を立て直そうと相当な努力をしていたそうだ。だが、無理が祟ったのだろう。やがて父は身体を壊した。そして努力も空しく、多額の借金を残したまま、会社は倒産したそうだ。そうしてその借金は彼女の肩に重くのしかかった。普通に働いても返せるような金額ではない。父も暫くは働くのは無理そうだ。「今まで育ててくれた父の為、私が頑張るしかない!」彼女はそう思った。だがそうは思っても何をどうすれば良いかわからない。彼女は悩んだ。そして、出した答えが夜の仕事だっ
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2010/07/03